グランド・レイアウト 第2期(2006~2010)に向けて (2006年1月25日)

2013年の創立100周年に向けて

2001年5月、上智学院理事会は、創立100周年に向けて、「上智大学 教育・研究・キャンパス再興 グランド・レイアウト」を学内外に発表した。
基本的方向・姿勢として、5つの事項を掲げた。

  • 1.優位性・独自性を樹立する。
  • 2.国際的評価を受けるに値する高等教育機関になる。
  • 3.キャンパス・ライフの環境条件を整備充実させる。
  • 4.21世紀を見据えた教育研究体制を確立するための組織・職制・人事計画を整備する。
  • 5.学生納付金・補助金・寄付金・収益事業計画、財政計画を樹立し、新しい財政基盤を整備する。

上智学院理事会は、「グランド・レイアウト」を推進し、実現するために「長期計画企画拡大会議」(理事長、学長、理事、学院評議員、大学評議会議員、理事長・学長任命委員により構成)を設置した。

また、「長期計画企画拡大会議」のもとに、具体的検討と計画立案を行うことを目的に、9つの専門部会(検討専門委員会)を同時に設置した。(図1)

(図1)長期計画関係会議体の概観 (PDF)(19.03 KB)

「グランド・レイアウト」は、基本的に、理事会の責任のもと、「組織、構成員参加型」の手法を採用し、堅持している。(図2)

(図2)推進体制とその仕組み (PDF)(15.78 KB)

グランド・レイアウト 第1期(2001年~2005年)

「人間の尊厳」をテーマとした新学部や新研究科の設置構想や大学院の高度化・多様化と実務専門家養成大学院の設立構想、高度な研究成果創出に向けた研究体制の確立とその基盤となる総合研究所(仮称)の設立構想、IT基盤整備やマルチメディア関連施設を含めた総合メディア構想の展開、効率的かつ機能的な事務組織の構築、2号館の建築計画や教職員の人事計画、財政計画など15の重要課題を掲げた。これらは、現在、「アジア人材養成研究センター」、「法科大学院」、「総合人間科学研究科」、「地球環境学研究科」、「総合人間科学部」、「国際教養学部」、「グローバル・スタディーズ研究科」の設置、「外国語学研究科言語学専攻」の充実、「研究機構」の設置、2005年3月の2号館および上智枝川寮の竣工、2005年4月からの「事務組織等の改革」など、多くのことが「新ホフマン計画」として実現した。

第1期を概観すると、教育制度や研究体制、建物建設や事務組織の構築といった、いわば「枠組み」あるいは「ハード面」を重点に取り組み、多くの新ホフマン計画が実現した。

1. アジア人材養成研究センター
設置の趣旨:
アジアの文化遺産などを対象とする地域研究と自国研究を推進するとともに、アジアに生活する人々の自立を支援する人材養成を行い、もって世界人類の平和と発展並びにアジア社会に貢献することを目的とする。
設置時期:
2002年10月
特記事項:
2001年3月及び8月に、バンテアイ・クデイ遺跡から、計274体の仏像が偶然発掘され、カンボジア王朝末期の歴史を塗り替える大発見となった。
2. 法科大学院
設置の趣旨:
国際関係法と環境法に特化した選択科目群を展開し、国際問題や環境保全に秀でた、21世紀を担う法曹を養成することを目的とする。
設置時期:
2004年4月
入学定員:
100人
3. 総合人間科学研究科
設置の趣旨:
人間の尊厳を重視する精神を育み、国内外においてヒューマン・ディグニティ(人間の尊厳)の実現に貢献しうる学問研究や教育を行う人材を育成することを目的とする。
設置時期:
2005年4月
入学定員:
教育学専攻 前期 20人 後期 5人
心理学専攻 前期 20人 後期 5人
社会学専攻 前期 10人 後期 3人
社会福祉学専攻 前期 10人 後期 3人
4. 地球環境学研究科
設置の趣旨:
自然科学、社会科学双方の手法と問題点を融合し、さらに立法、政策、経済などをも視野に入れた、総合的で専門性の高い研究・教育を目的とする。
設置時期:
2005年4月
入学定員:
前期 60人     後期 10人
5. 総合人間科学部
設置の趣旨:
人間の尊厳を重視する精神を育み、人間の尊厳の実現のために貢献できる人材を育成することを目的とする。
設置時期:
2005年4月
入学定員:
教育学科 50人
心理学科 50人
社会学科 50人
社会福祉学科 50人
6. 国際教養学部
設置の趣旨:
ますます複雑化し、速い速度で変化する21世紀の国際社会の中で、文化の違いを超えた相互理解を深めるために必要な知的、人間的能力を養うことを目的とする。
設置時期:
2006年4月
入学定員:
170人
7. グローバル・スタディーズ研究科
設置の趣旨:
学際的学問分野であるグローバル・スタディーズについて従来の学問の域を超えたボーダーレス化した複数ディシプリンの構築を目的とする。
設置時期:
2006年4月
入学定員:
国際関係論専攻 前期 15人 後期 6人
地域研究専攻 前期 15人 後期 5人
グローバル社会専攻 前期 30人 後期 3人
8. 外国語学研究科言語学専攻 定員変更
変更の理由:
言語学専攻への恒常的な合格者超過への対応と、社会的に重要な意味を持つ英語教授法(TESOL)コースの新設を目的とする。
変更時期:
2006年4月
変更人数:
15人から23人へ変更
9. 研究機構
設置の趣旨:
研究機構は、上智大学の組織的研究を支援し、その水準を高め、研究成果を学内外に発信することで、本学の研究活動の発展に寄与することを目的とする。
設置時期:
2004年7月
10. 2号館
建物の目的:
「21世紀の上智大学のメッセージタワー」として、「教育研究の拠点」、「快適なコミュニティの場」、「環境・耐震・バリアフリーへの配慮」を基本コンセプトとし、美的で文化的な価値を持ち、キャンパス環境、四谷の周辺環境に調和したシンボル的建物として建築した。
建物の概要:
構造/鉄骨鉄筋コンクリート造 地下3階・地上18階建、敷地面積/43,111.91㎡、建築面積/3,288.36㎡、延床面積/40,129.58㎡、高さ/75.00m
竣工時期
2005年3月
11. 上智枝川寮
建物の目的:
「より快適」で「安全な学生生活」をテーマとして、「入寮したその日から快適な生活」「安全性と利便性を考えた空間」「充実したネットワーク環境」「学生寮としての規律を重視」を基本コンセプトとし、臨海副都心に面したウォーターフロントに82室を擁する学生寮を建築した。
建物の概要:
住所/江東区枝川1-4-9、室数/82室、構造/鉄筋コンクリート造 地上6階建、敷地面積/1,003.40㎡、建築面積/663.45㎡、延床面積/2,530.22㎡、高さ/17.198m
竣工時期:
2005年3月
12. 効率的かつ機能的な運営組織の再構築
再構築の目的:
これまでの事務運営組織は、1984年から実施された「人事制度ならびに職制」により、今日まで運営・維持されてきたが、時代の流れと変化とともに見直しの時期に入った。事務運営組織の再構築は、運営機能並びに管理企画機能を整備し、より適切で強力な運営を図ることを目的とした。
新組織の概要:
「部」・「課」制を廃止し、「局」制とした。
事務運営組織は、6局とした。短期大学及び社会福祉専門学校に事務センターを置いた。
総務局、人事局、財務局に「グループ」を、学事局、学生局、国際学術情報局に「センター」を置いた。
事務運営組織の目的を明確にするため、新たに「学校法人上智学院事務局組織規程」を制定した。
実施時期:
2005年4月(完全移行: 2005年10月)

グランド・レイアウト 第2期(2006年~2010年)

第1期の実績を踏まえ、「教育研究活動」そのものとその「支援」、「ソフト面」を重点化する方向で取り組む。

「全人教育・教養教育のあり方」や「入試制度・業務体制の改善」、「学術交流の促進」や「研究業績主義の導入」、「研究のための安定的な資金調達」、「教育研究に関わる学生支援体制の確立」や「職員人事制度の再構築」、「資産運用」を重点課題として取り上げる。 「キャンパス・ライフの環境条件を整備充実」については、第1期に引き続き重要課題とし、「上智会館・学生寮・6号館の解体、新築計画の策定」、「キャンパス(市谷・石神井・秦野・真田濠)の利用計画」などに取り組む。

上智短期大学、上智社会福祉専門学校、生涯教育においては、その将来構想の立案やその実現を推進する。

第2期における重要課題について(案)

  • 1. 全人教育・教養教育のあり方 アカデミック・プラン等検討専門第1委員会
  • 2. 学長直属審議機関の設置
  • 3. 入試制度・業務体制の改善
  • 4. 学術交流の促進 アカデミック・プラン等検討専門第2委員会
  • 5. 研究業績主義の導入
  • 6. 研究のための安定的な資金調達
  • 7. 教育研究に関わる学生支援体制の確立 フィジカル・プラン等検討専門第1委員会
  • 8. 効果的な会議体、委員会の整備
  • 9. 6号館及び上智会館の解体、新築計画の策定 フィジカル・プラン等検討専門第2委員会
  • 10. キャンパス(市谷・石神井・秦野・真田濠)の利用計画
  • 11. 教員の所属と数量的基準[含む、学校教育法一部改正の対応] 人事計画等検討専門委員会
  • 12. 職員人事制度の再構築
  • 13. 手数料・事業収入の適正化 財政計画等検討専門委員会
  • 14. 資産運用の展開[含む、固定資産評価と固定資産運用]
  • 15. 将来構想[短期大学] 上智短期大学検討専門委員会
  • 16. 将来構想[社会福祉専門学校] 上智社会福祉専門学校検討専門委員会
  • 17. 将来構想[生涯教育] 生涯教育検討専門委員会

グランド・レイアウト 第3期(2011年~2013年)

2013年、上智大学は創立100周年、上智短期大学は40周年、上智社会福祉専門学校は50周年をそれぞれ迎える。

「グランド・レイアウト」最終期、第3期(2011年~2013年)では、これまでの「グランド・レイアウト」の検討をさらに進め、新ホフマン計画を実現していく。そして、2001年からの様々な試行錯誤の中で確立された「恒常的な自己変革体制」のもと、新たなる100周年、新たなる世紀における「世界に並び立つ大学」の目標の実現に向けて、限りない「挑戦」を続ける。

結 び

「冬の時代の到来」に立ち向かった本学の「グランド・レイアウト」は、「冬の時代の真只中」にあって、これよりも増して、本学が取り組まなければならない新たな課題が多くあること認識し、2006年以降の第2期に向けて、困難な環境を「可能な限りプラスに捉え、恒常的な自己変革体制を構築」し、「厳しい状況変化のなかで、キリスト教精神を土台とした上智大学創立当初からの理念を踏まえつつ、新しい世紀に向け、自由をもたらす真理と福音的正義に基づいた一歩」をさらに踏み出さなければならない。

2001年に発表された「グランド・レイアウト」は、完結的なものではなく、時代の推移を見ながら、絶えず見直し、修正版を作成し絶えず改める。